「あの人のことを好きか嫌いかもわからない人がいるんです」
それは青春の特権のような言葉で、印象に残ったな。
あるいは好きなのかもしれないな、という淡い予感を、
決めなくていいや、という強がりや、意味不明なさわやかさ。
一緒にドライブして、窓を開けて、風を招き入れる。
。。。
いまは、車の中。
駐車場。あまり泣かないのに、気がついたら泣いていた。
誰もいない駐車場。
遠くから船の音。
少しの光と曇った空。
。。。
カフェでコーヒーを飲んでいた。
その時、大粒の雨が降り出し、私はベランダに干しっぱなしにしている洗濯物を思った。
濡れていく私の服たち。
少しだけある彼の服たち。
濡れていく洗濯物のことを思いながら、
コーヒーを飲む。
まだ雨は止みそうもない。
なぜか涙が出てきた。
。。。
太陽のような悲しみを見た。
憎しみのような愛を感じた。
海底に沈んだ喜びが、私のまわりを泳いでいる。
太陽にすら黒点があるように、私は光のなかでちょっと悲しくなる。
人生の影のなかで少しだけの嬉しさを感じる。
こんな時は一番星を探してみよう。
。。。
影というのはもうひとつの光の名前。
影を見つける。
光を探す。
光を見つける。
どこかにできている影を探す。
心のなかに影ができるということは、ひょっとして光もどこかに存在しているということ?
影というのはもうひとつの光の名前。
弱さというのはもうひとつの愛の名前。
。。。
たまらなく好きなの。
そのやり方。
たまらなく好きなの。
その愛し方。
たまらなく冷たくて、たまらなく好きなの。
その、ものの見方。
ちゃんと私があなたの冷たさを愛していることもわかっている。
その残酷さがたまらなく好きなの。
。。。
少しくらい不自由な方が自由に生きられる。
迷った道が、自分だけの道であるように。
迷った道が、自分だけの道になるように。
迷えば自分だけの道は育つ。
そう育つのだ。
あなたはよりあなたらしく、不自由さはより愛に変わり、
その間違いは育つのだ。
間違いが魅力に育つ日へ。
。。。
正しいから、違う。
あなたの言葉は全部、正しいから、違うんだ。
正しい言葉も、行動も、今の私にはいらない。
正しさなんてビリビリに引き裂いてやる。
なんだか少しの嘘がほしい。
少しだけの嘘をアイスティに入れて飲みたい。
そう思いあなたの部屋から靴下を片方だけ盗んできた。
。。。
あなたは夏のカフェで、そっとシャツのボタンをひとつはずす。
それをすこし離れた席の男性が見て、素敵な仕草だと思う。
男性はあなたに声をかけ、やがてあなたは彼と結婚し、子供が生まれる。
子供が大きくなり、あなたの頬にキスをする。
シャツのボタンをはずしただけなのに。
。。。